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2021-10-04

標準レンズ考。相棒を求めて行ったり来たり。

こんにちは。世田谷の撮影スタジオ「 Studio Heartbeat 」代表チカザワです。

秋っぽくなってきましたが、まだ外を歩いているとジワっと汗をかくようなタイミングがありますね。
先日はまさかの蝉の声が聞こえていました。

さて、カメラマンとしてお仕事をするようになってからプライベートでカメラを持ち出さなくなった、というのは先日のブログで書いた通り。

ですが、ここ一ヶ月半は猫がいなくなったのを機に、ブログの開始と共に日々を記録しようとカメラを持ち運ぶようにしています。

そして昔からの悩みではあるのですが、いざ日々の中でカメラを携行しようとすると「どういったカメラ、レンズの組み合わせが良いのか」という悩みに向き合うことに。
カメラもそうなんですが、特にレンズによって撮れる写真ってだいぶ変わるので、自分が日々の中でどういった写真を生活の中で撮っていきたいのか、と言う前提の疑問にぶち当たることになるのです。

で、気軽に街中スナップが撮りたい! となるのですが、さてさて、どんなレンズを持ち出しましょうか。
なんでも撮れると言う万能の組み合わせももちろんあるにはあるのですが、総重量が2キロとかになるので、お仕事でもないと非現実的。
厳選に厳選を重ね、これぞというシステムを色々と試してみてるのですが、ここにきてある程度候補が絞れてきました。

Studio heartbeat

とりあえず、候補としてはこの三種類。
レンズの候補は2本、そしてコンパクトデジカメ。それぞれに良さと弱点があります。

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第一の候補はリコーのGR3
最強のスナップシューターとか言う異名があるとおり、いつでも気軽に持ち運べ、思い立った時にすぐに撮影が可能、と言う面では最強です。

まず、普通にポケットに入るサイズ。それなりに画質の良い本格的なカメラ(スマホでなく)としては、他になかなか得難いサイズ感です。

被写体を見つけて「いいな」と思った瞬間、ポケットからカメラを出しながら指は電源を入れ、起動と共にシャッターを押す。その間ほんの1~2秒で、全てが完結する感じ。

特に、背面モニターがタッチパネルになり、フォーカスを合わせたいところをタッチするとピント合わせとシャッターを同時に行う設定にしておけば、最強です。この型は手ぶれ補正も付いているので、夜でも多少の無理は聞く感じです。
マクロ撮影もコンパクトならではの強さで、かなり寄ることが可能です。

良いことしか書いてないように思うのですが、こいつの弱点があるとすると、日常の業務でフルサイズセンサーのカメラを触っている身からすると、やはりAPS-C のセンサーサイズでは比べると同じ条件下で暗部ノイズや白飛びが気になったり、解放が2.8という暗さ、フルサイズ換算28ミリの実質かなりの広角寄りという性質のため、ボケた写真が撮りづらい、などです。
特に何も考えなくても広い範囲でピントが合うというのは、スナップカメラとしては優秀な要素の1つなのですが、被写界深度を浅くしてボケた写真が撮れる、というのも表現として大きな武器なので捨て難いところなのです。

ちなみに同様の理由で、今回の候補からはズームレンズを用いたシステムは外しています。
そもそもお仕事でも基本的には必要でない限り、ズームは使わないタイプのカメラマンです。
もちろん、画角を瞬時に操れるレンズという面では、それも表現の幅としてはアリなのですが。

話を戻して、GR
ほんと、230グラムほどでカメラもレンズも一緒というのは、なかなかに替えのきかないオンリーワンの強みなのですが。
最近になって40ミリのほぼ標準レンズ化した機体も出ると発表があったのですが、どんな感じでしょうか。
このサイズ感と性能でフルサイズになれば即買いするのですが、さすがに物理的な限界というものがありそうです。
物理を無視したコンピュテーショナルフォトグラフィーが発達してきている昨今、先にそちらの方がブレイクスルーを果たしそうです。

そしてここから先はフルサイズセンサーのカメラとなります。
使用するカメラはこちら

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Sony の α7c
エントリー機で、機能をかなり削っているのですが、バッテリー込みで500グラム程度とフルサイズとしてはかなりの軽さ。
割り切って自分なりの使いこなしを覚えれば、悪くないカメラです。

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次の候補がフォクトレンダーのレンズ nokton 50mm 1.2 SE


カメラが500グラムなので、そこからレンズも合わせた重量を考慮に入れる必要が出てきます。こちらのレンズは約380グラム。1.2の絞り開放値としては軽い。
といっても、この時点で約900グラム。フルサイズカメラとレンズの組み合わせと考えると、特に重いなんてことは無いのですが、前述のGRだと3〜4つ分ぐらいになると考えてしまう…。それぐらい、軽さと画質のバランスは常に考えてしまいます。

さて、このレンズの良いところ。
それは圧倒的なボケ。50mmという焦点距離は一般的に標準レンズとして親しまれていて、絞り開放値も1.4や1.8などと選択肢も多いのですが、こちらは圧巻の1.2。
見かけ上の同スペックにソニー純正の50mm 1.2GMというのもあるのですが、こちらはお値段25万、重さは脅威の780グラム。 どう考えても気軽にバッグに放り込んで持ち歩くようなレベルじゃありません。
それが、このnoktonの場合は、適度なコンパクトさと重さで、1.2の明るさを携行できるのです。

このレンズの良いところはマニュアルフォーカスというところ。被写体に向き合って、ピントリングをヌルっと回していると「写真撮ってる!」って感じにさせてくれます。 逆に、このマニュアルフォーカスというところがこのレンズの弱点でもあるわけですが…。後述します。

次にこのレンズの良いところ。それは開放値のおかげもあって、非常に柔らかい描写になるということ。
近接撮影で花なんかの白い被写体を絞り開放で撮ると、滅茶苦茶フワッとなります。どこにもピントあってないんじゃないかと思うぐらい。
最近のレンズは「良く写りすぎる」と言われるのですが、このnokton は使い方次第ではその逆を行っていてわざと「しっかり写さない」ことができます。これはおそらく、後加工で作り出すのは非常に難しいと思うので、「ならでは」の描写が得られます。 この描写をメリットと捉えるか、デメリットと捉えるかで使用感が変わるかなと。
同じような質感としては、fujifilm のX 100シリーズの4までの開放が近かった感じでしょうか。5はレンズが変わったとのことですが、確認してませんね。

そして、このレンズの弱点。
やはり、マニュアルフォーカスというのは気分としては良いのですが、「一瞬」を切り取りたいと思った時にモタつきが生じるのも事実。 物撮りなんかには良いのですが、街を歩いていて「撮りたい」と思った瞬間に、ピントを合わせている時間でチャンスを逃すこともしばしば。
そしてこのレンズの特徴でもある絞り開放の際のピント面の浅さだと、被写体までの距離を目測とレンズ数値でピント合わせるのはほぼ不可能。ピーキングやファインダー内での映像の拡大を使っても、ピントを外すことも増えて、まあまあストレスになりますね。

もしかしたら日常で常に携行するというより、「そんな気分」になったときに持ち出す、そんなレンズかなと。
ピントリングをヌルヌル回しているだけでも気持ち良いので、割と嗜好品的な側面も感じるレンズですね。

ちなみに、仕事で女性ポートレートに使ってみたのですが、じっとしていてくれる被写体なら、なかなか良い感じでした。
基本は85mm 1.4GMを使うことが多いのですが、アクセントとして使うのが良いかも。

ちなみに、nokton と似たようなレンズに sony 純正の55mm 1.8というレンズも持ってはいるのですが、こちらは最短撮影距離が結構長く、また55mmと 50mm以上に撮影場所の引きを選ぶことになるので、滅多に使っていません。今回の候補からは真っ先に外しています。

studio heartbeat

そして最後はソニー純正の SEL35F18F

このレンズの良いところは、まず280gと軽いところ。レンズ単体で持って先ほどのnoktonと比べてみると、たった100グラムの差ですが、その軽さが際立ちます。


そして、写りはこのコンパクトさにしては抜群に良い。1.8開放だと少しフリンジが気になりますが、2.0に絞ると全然気にならなくなるのは脅威的。

次に良いのは倍率が0.24倍とめちゃくちゃ被写体に寄れるところ。マクロレンズとまではいかないですが、テーブルフォトなんかを撮っているともう少し寄れれば良いな、と感じることもあるので、ちょうど良い感じ。前述のnokton の最短撮影距離が45センチに対して、こちらは22センチまで寄れます。もちろん画角の違いはあるのですが、数値以上に被写体にグッと寄れる印象ですね。常に持ち歩く道具としては、ポイントが非常に高いです。

次の良いところは、レンズそのもの性能というより、「35mmってやっぱり撮りやすいよね」という点。
一般的に標準レンズとされる50ミリは、遠近感のつき方が肉眼に近くなるのでスタンダードということで好まれているのですが、スナップ撮影となると「引けない」ことがしばしば。
個人的には、被写体を見つけて、片目だけで見つめて、画を決める際に、ちょうど収まりが良い画角というのは35ミリか少し広いか、ぐらいだと思っています。
目についたものをパシャパシャ撮っていくというスタイルのスナップ撮影の場合は、テーブルフォトであれ、街中であれ、空を含めた景色であれ、35ミリって意外と万能で、自分的にはこちらが「標準レンズ」だと感じています。


どうしても被写体にもう少し寄りたい、一枚の写真として遠近感をなくしたい、となると気軽に最近のカメラはクロップ機能が使えるので、切り替えて使うと擬似的に50mmになるというのも扱いやすいですね。ただのクロップと言われればそれまでですが、後でPCで処理する面倒くささを考えると、全然抵抗ないタイプの人間です。


1.8という絞りも、もう少し長くて開放が明るいレンズに比べると物足りない気もするのですが、撮り比べてみるとそんなに気にならないかも。人物撮影するとなると候補から外れそうですが、日常のスナップとしてはボケは十分。特に、寄れるのでその際にはかなりボケが活かされた表現ができる印象ですね。

そして、前述のnokton を使い込んでからこのレンズに変えると実感するのが「AFが優秀」というところ。
そもそもオートフォーカス自体がマニュアルに比べて便利なのは当たり前と言えば当たり前なのですが、SONYのカメラのAF機能が優秀すぎて、精度が高い上に追随から瞳フォーカスから、てんこ盛りの現代の技術の恩恵を受けようとなるとやはり純正レンズというのは気軽に付き合う相棒としては、優秀なんです。

結局、色々と比べてみるとこのレンズに落ち着きそう、という話なんですが、このレンズの唯一と言って良いほど不満な点、それは「ヒョロ長くて安っぽい質感」なこと。
ぶっちゃけ撮れる写真には一切関係ないのですが、nokton に比べると数センチ全長が長く、触れた時の肌触りやピントリングの感触が安っぽいことが気になります。 いや、写りには関係ないし、そのおかげで軽量化が図れてるのなら、仕方ないのですが…。

そしてこれは完全に感覚の話になるのですが、逆に「便利で優秀すぎて面白みが少ない」ところもあります。
真逆を求めるが故に前述のnokton とかにたどり着くのですが、結局便利さを求めて行ったり来たり…。

真の相棒がなかなか定まらないですね。

studio heartbeat
35mm の写真。背景を入れつつ、被写体とボケ感とのバランスも、悪くない気がします。

nokton にgr だと標準50ミリと口角28ミリで組み合わせとしては都合よかったのですが、35ミリに絞るとなると、広角側に何かレンズを足したいところ。 tamron の17-28とやらに興味があるのですが、どうなんでしょう。
400グラム。
総重量を考えると、ぎりぎりかなあ…。

体を鍛えて、重さを気にならないようにすれば? って感じですが…。

Studio Heartbeat 近澤幸司 -チカザワコウジ- 個人作品サイト

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